出産後の授乳期は、ホルモンバランスの変化や生活リズムの乱れなどで体調を崩しやすい時期です。
そんな中でも
「親知らずが痛む」
「虫歯が進行して抜歯が必要になった」
といった歯科トラブルは起こり得ます。
また、この時期に矯正治療を始めたいと考える方も少なくありません。
しかし、授乳中の抜歯や投薬、さらに矯正治療に関しては
「母乳に影響はないの?」
「安全に治療できるの?」
と不安を抱く方が多いのではないでしょうか。
この記事では、授乳中の抜歯における投薬の安全性と、矯正治療を進める上での注意点をわかりやすく解説します。
授乳中でも抜歯は可能?

結論から言うと、授乳中でも抜歯は可能です。
母乳に影響が出るのは「投薬内容」による部分が大きく、処方薬を正しく選択すれば安全に抜歯が行えます。
- 抜歯が必要になるケース
- 親知らずの炎症(智歯周囲炎)
- 重度の虫歯や歯周病
- 矯正治療のための便宜抜歯
放置すると炎症が悪化し、授乳や育児に支障をきたす恐れがあるため、必要な場合は早めの処置が推奨されます。
授乳中に使われる薬と母乳への影響

局所麻酔薬
抜歯の際に使用する局所麻酔薬(例:リドカイン)は、母乳中に移行する量がごくわずかであり、授乳への影響はほとんどありません。
通常の抜歯であれば、麻酔を使用しても授乳を中断する必要はありません。
抗生物質
抜歯後の感染予防のために抗生物質が処方されることがあります。
授乳中でも比較的安全とされるのは以下のものです。
- ペニシリン系(アモキシシリンなど)
- セフェム系(セファレキシンなど)
一方で、マクロライド系(クラリスロマイシンなど)は使用に注意が必要な場合もあるため、必ず歯科医師に授乳中であることを伝えましょう。
鎮痛薬
抜歯後の痛みに対しては鎮痛薬が処方されます。
- アセトアミノフェン → 授乳中でも安全性が高いとされる
- イブプロフェン → 比較的安全とされ、授乳中にもよく用いられる
- アスピリン → 乳児への影響が懸念されるため授乳中は避ける
服薬と授乳タイミングの工夫
万が一母乳への移行が心配な場合は、薬を服用した直後に授乳を済ませ、次の授乳までの時間を空けると安心です。
授乳中に矯正治療はできる?

矯正治療自体は投薬を伴わないため、授乳中でも基本的に問題なく行えます。
特に、マウスピース矯正やワイヤー矯正は授乳への影響がありません。
ただし、授乳期は次の点に注意が必要です。
ホルモンバランスの影響
産後はホルモンの変化によって歯周組織が敏感になりやすく、歯茎が腫れたり出血しやすくなることがあります。
矯正治療中は歯磨きがしづらいため、歯周病リスクに注意が必要です。
骨代謝の変化
授乳期はカルシウム需要が高まり、骨の代謝も変化しています。
歯の移動スピードや治療計画に影響する可能性があるため、定期的な経過観察が重要です。
抜歯を伴う矯正の場合
矯正治療に便宜抜歯が必要なケースでは、前述の通り薬の影響を考慮する必要があります。
当院では授乳中の患者様に対する特別なお薬は用意しておりませんので、通われてる産科の先生に処方して頂いてくださいね。
授乳中に矯正を始めるメリットとデメリット

メリット
- 育児休暇中に通院時間を確保しやすい
- 将来的に子どもと一緒に写真を撮るときに歯並びを気にせず笑える
- 歯並び改善により口腔清掃がしやすくなり、虫歯や歯周病予防にもつながる
デメリット
- ホルモンバランスの影響で歯肉炎や歯周病が進行しやすい
- 子育て中は通院が負担になる場合がある
- 抜歯が必要な場合、薬の選択に制限がある
授乳中の歯科治療で大切なこと
必ず「授乳中」であることを歯科医師に伝える
自己判断で市販薬を使用しない
服薬後の授乳タイミングを工夫する
矯正治療中は口腔ケアを徹底する
まとめ

授乳中であっても、適切な薬を選べば抜歯は安全に行えます。
局所麻酔や一部の抗生物質・鎮痛薬は母乳への移行が極めて少なく、授乳を続けながら治療が可能です。




