歯並びや噛み合わせを整えるための矯正治療にはさまざまな方法があります。
近年注目されている「マウスピース矯正(インビザラインなど)」は透明で目立ちにくく、生活のしやすさから人気を集めています。
一方で、当院では「下顎を前方へ移動させるマルチループ矯正」という、顎関節への負担を考慮した独自の治療法も行っています。
この記事では、IPRを主体とするマウスピース矯正と、顎関節に優しいマルチループ矯正の違いをわかりやすく解説します。
矯正方法を比較検討したい方や、自分に合った治療法を探している方はぜひ参考にしてください。
IPRを主体としたマウスピース矯正とは?

IPR(Interproximal Reduction)とは?
IPRとは、歯と歯の間を0.2~0.5mmほど削ることでスペースを確保し、歯をきれいに並べる方法です。
抜歯を避けたいケースや軽度から中等度の歯列不正に用いられることが多く、マウスピース矯正では非常によく使われるテクニックです。
特徴
- 透明で目立ちにくい装置:取り外し可能なため、見た目を気にせず矯正できる。
- 歯を削ってスペースを作る:主にIPRで調整し、抜歯をできるだけ回避する。
- 歯並びの改善が主眼:見た目の整えに重点が置かれ、骨格や顎関節へのアプローチは少ない。
メリット
- 取り外しが可能で清掃性が良い
- 矯正中でも食事制限が少ない
- 目立たず社会生活に支障が出にくい
デメリット
- 患者様自身の装着協力が不可欠
- 顎の位置や骨格的なズレは改善しにくい
- IPRを多用すると、歯の形態が変わることもある
当院で行う「下顎を前方移動させるマルチループ矯正」とは?

マルチループワイヤー矯正(Multiloop Edgewise Arch Wire:MEAW)は、特殊なループが組み込まれたワイヤーを使用する治療法です。
当院ではさらに改良を加え、下顎を前方へ移動させることで、顎関節に優しい噛み合わせを実現することを目標としています。
特徴
- 顎関節を考慮した矯正:顎の後方への圧迫を減らし、下顎を正しい位置に誘導する。
- 骨格的な不正咬合に対応:出っ歯(上顎前突)、受け口(下顎前突)、開咬など幅広い症例に対応可能。
- 歯だけでなく噛み合わせ全体を改善:見た目だけでなく機能的にも優れた咬合を目指す。
メリット
- 顎関節症のリスクを軽減
- 下顎の位置を整えることで顔貌も自然に改善
- 難症例にも対応しやすい
デメリット
- ワイヤー装置のため、マウスピース矯正よりは目立つ
- 治療中の違和感や痛みが出やすい場合がある
- 高度な専門技術を必要とするため、対応できる歯科医師は限られる
両者の比較

| 項目 | IPR主体のマウスピース矯正 | 下顎前方移動マルチループ矯正 |
|---|---|---|
| 治療目的 | 主に歯並び改善 | 顎関節と咬合の改善 |
| 方法 | 歯を少し削ってスペース確保 | ワイヤーのループで力を調整し顎を誘導 |
| 対応できる症例 | 軽度~中等度の歯列不正 | 重度の不正咬合・顎偏位にも対応 |
| 見た目 | 透明で目立ちにくい | ワイヤーが見える |
| 顎関節への配慮 | 基本的に少ない | 下顎を前方に導き関節への圧迫を減らす |
| 治療中の快適さ | 取り外し可能で生活しやすい | 固定式のため違和感が出やすい |
どちらが自分に合っているのか?

見た目を重視し、軽度の歯並び改善を希望する方 → マウスピース矯正がおすすめ。
顎のズレや噛み合わせの不具合、顎関節症の不安がある方 → マルチループ矯正の方が適している。
治療法の選択は、患者様の歯並びの状態、顎関節の健康状態、生活スタイルによって変わります。
そのため、矯正を検討する際は精密な診断を受け、自分に合った治療計画を立てることが重要です。
まとめ

「IPR主体のマウスピース矯正」と「下顎を前方に移動させるマルチループ矯正」は、同じ矯正治療でありながら目的もアプローチも大きく異なります。
マウスピース矯正は、目立たず快適に歯並びを整えたい方に適した治療。
マルチループ矯正は、噛み合わせや顎関節の健康を考え、根本的な改善を目指す治療。
矯正治療を「見た目だけ」で考えるのか、「機能面まで含めて」考えるのかによって、選ぶべき治療法は変わってきます。
当院では、患者様一人ひとりの状態を丁寧に診断し、最適な方法をご提案しています。




