「矯正治療ってどうやって歯を動かしているの?」

「なぜあんなに固い歯が動くの?」

歯列矯正を検討中の方なら、一度は疑問に思ったことがあるのではないでしょうか。

今回は、歯が矯正治療によって動く仕組みやその原理について、専門的すぎない表現でわかりやすく解説します。

あわせて、歯が動くスピードや、年齢との関係についても触れていきますので、ぜひ参考にしてください。

そもそも歯はなぜ動くのか?

歯は「骨に埋まっている」わけではない。

一見すると、歯は顎の骨にしっかりと固定されていて動きそうにないように思えます。

しかし、実際には歯は「歯根膜(しこんまく)」というクッションのような組織を介して、歯槽骨(しそうこつ)という骨に支えられている構造になっています。

この歯根膜があるおかげで、歯はある程度の力に反応して少しずつ移動することが可能なのです。

矯正治療で歯が動く原理

① 矯正力が歯にかかる

矯正装置(ワイヤーやマウスピース)を装着すると、歯に一定方向の力が加わります。

この力を「矯正力」といいます。

② 歯根膜が圧迫・牽引される

矯正力により、歯根膜の片側が圧迫され、反対側は引っ張られる形になります。

この変化が、次の重要な反応を引き起こします。

③ 骨が「吸収」と「再生」を繰り返す

圧迫された側では、骨が「吸収」されていきます。

これは、破骨細胞(はこつさいぼう)という細胞が骨を溶かしていく働きによるものです。

一方、牽引された側では、骨芽細胞(こつがさいぼう)が働いて、新しい骨が作られていきます(「骨形成」)。

この「骨の吸収と再生」が連続的に起こることで、歯が少しずつ移動するのです。

矯正治療は「自然の力」を利用している

矯正治療は、単に歯を無理やり動かすのではなく、身体が持つ自然な治癒・再生の仕組みを利用して、少しずつ形を整えていく医療行為です。

この仕組みは、骨折後に骨が自然に治っていくプロセスと似ています。

強すぎる力をかけてしまうと、逆に歯根や骨にダメージを与えてしまうため、矯正治療では適切な弱い力を長期間かけることが重要です。

年齢によって歯の動き方は変わる?

子どもは歯が動きやすい

子どもの骨は柔らかく、新陳代謝も活発なため、矯正によって歯が動きやすい傾向があります。

特に成長期は顎の骨も発育中のため、骨格自体のバランスを整える治療が可能です。

大人でも矯正は可能

一方で、大人は骨の代謝が落ちているため、歯が動くスピードは遅めになりますが、適切な矯正治療によってしっかりと歯を動かすことができます。

ただし、歯周病や歯の状態によっては、治療計画に制限が出る場合もあるため、矯正を始める前には精密な検査が欠かせません。

矯正治療の種類と歯の動かし方

ワイヤー矯正(表側・裏側)

ブラケットとワイヤーで力をかけて、歯を3次元的に動かします。

細かいコントロールが可能で、多くの症例に対応できる治療法です。

マウスピース矯正(インビザラインなど)

透明なマウスピースを段階的に交換しながら歯を動かします。

目立たず、取り外しが可能というメリットがありますが、対応できる症例には限りがあります。

歯が動くスピードはどのくらい?

歯が1ヶ月に動く距離は約0.5~1mm程度が目安です。

歯並びの状態や年齢によって個人差はありますが、全体矯正であれば平均して1年半~3年程度かかるケースが多く見られます。

歯が動くときの痛みは?

矯正治療を始めたばかりの頃や、装置の調整直後は、軽い痛みや違和感を感じることがあります。

これは歯根膜や骨が反応している証拠であり、通常は数日以内に落ち着くことがほとんどです。

ただし、強い痛みが続く場合は、矯正装置に問題がある可能性もあるため、歯科医に相談しましょう。

歯を安全に動かすために重要なこと

  • 定期的な通院:治療計画に基づいて適切に調整を行うために、通院は欠かせません。
  • 自己管理:マウスピースの装着時間や歯磨きなど、患者自身の協力も治療成功のカギです。
  • 口腔内の清潔保持:歯が動く過程では歯周病のリスクもあるため、日々のケアが重要です。

まとめ:矯正治療は「力」と「体の再生力」の組み合わせ

矯正治療で歯が動くのは、矯正力によって歯根膜が反応し、骨がリモデリング(再構築)されるためです。

決して無理やり押し込んでいるのではなく、体が本来持っている治癒能力を活かして、少しずつ歯列を整えているのです。

見た目の改善だけでなく、噛み合わせや健康寿命にも良い影響を与える矯正治療。

仕組みを理解することで、より納得して治療に取り組むことができるはずです。