虫歯や歯周病、外傷などでやむを得ず歯を抜くことがあります

本来であれば、抜歯後にはブリッジ・入れ歯・インプラントなどで欠損部を補うことが推奨されますが、「そのままでも食事ができるから」と放置してしまう方も少なくありません

しかし、歯を抜いたまま放置すると、噛み合わせの異常や顎関節症、さらには全身の健康にも影響する可能性があります

今回は、抜歯後に放置することで起こる噛み合わせの問題について詳しく解説します

抜歯後に噛み合わせが乱れる理由

歯は1本ずつ独立しているように見えますが、実際には上下左右の歯が支え合うことで安定した噛み合わせを作っています

1本でも欠けてしまうと、その均衡が崩れて連鎖的にトラブルが生じるのです

隣の歯が傾いてくる

抜歯した部分のスペースに向かって、隣接する歯が倒れ込むように移動します

これにより歯並びが乱れ、咬み合わせのバランスが崩れます

噛み合う歯が伸びてくる（挺出）

上下の歯はお互いに接触して安定します

抜歯で相手の歯がなくなると、残された歯が噛み合う相手を求めて伸びてきます

結果として咬合高径（噛み合わせの高さ）が不均一になり、顎関節に負担を与えます

噛み合わせのズレ

奥歯を失うと、残っている前歯や反対側の歯に負担が集中します

そのため前歯がすり減ったり、顎の位置がずれて顎関節症を引き起こすこともあります

抜歯放置によって起こりやすい噛み合わせ異常

奥歯を抜歯した場合

奥歯は「噛む力の主役」です

放置すると以下の問題が起こりやすくなります

  • 噛む力が弱くなり、食事が不自由になる
  • 前歯に負担が集中して、歯がすり減ったり出っ歯になる
  • 顎関節に負担がかかり、口を開けにくくなる

前歯を抜歯した場合

見た目の影響が大きいため放置する人は少ないですが、前歯を失うと…

  • 発音がしづらくなる
  • 食べ物を噛み切れない
  • 他の歯が倒れ込み、歯並びが急速に悪化する

複数本の歯を失った場合

複数本を放置すると、歯列全体のバランスが崩れます

  • 噛み合わせの高さが下がる（低位咬合）
  • 口元のシワやほうれい線が目立つ
  • 噛む筋肉のバランスが崩れ、肩こりや頭痛を伴うことも

噛み合わせ異常がもたらす二次的な影響

顎関節症

噛み合わせのバランスが崩れると、顎関節に偏った力がかかりやすくなります

その結果、口を開けると「カクッ」と音がしたり、痛みや開口障害が起こることがあります

歯周病や虫歯のリスク増加

傾いた歯や挺出した歯は歯磨きが難しくなり、プラークがたまりやすくなります

これにより歯周病や虫歯が進行しやすくなるのです

消化器への負担

噛む力が低下すると、食べ物を細かく咀嚼できず、胃腸に大きな負担をかけます

結果として消化不良や栄養吸収の低下につながることもあります

見た目や発音の変化

歯の欠損を放置すると、口元のバランスが崩れて老けた印象になったり、発音に支障が出ることもあります

抜歯後の噛み合わせ異常を防ぐための治療法

ブリッジ

  • 欠損部の両隣の歯を削り、橋のように人工歯をかけて補う治療
  • 固定式なので違和感が少ないが、健康な歯を削る必要があるのがデメリット

入れ歯

  • 取り外し可能で、複数の歯を一度に補える
  • コストは比較的抑えられるが、違和感やズレが生じやすい

インプラント

  • 顎の骨に人工歯根を埋め込み、その上に人工歯を装着する方法
  • 周囲の歯を削らずに済み、天然歯に近い噛み心地が得られる
  • ただし、手術が必要で費用も高め

まとめ：抜歯放置は噛み合わせを崩すリスク大

歯を抜いたまま放置すると、

  • 隣の歯が倒れる
  • 噛み合う歯が伸びる
  • 噛み合わせのバランスが崩れる

といった問題が起こり、やがて顎関節症や全身の健康にも悪影響を与えます

そのため、抜歯後は必ず歯科医師と相談し、適切な補綴治療を受けることが大切です

放置してから時間が経つほど治療は難しくなるため、早めの対応を心がけましょう