歯科や矯正治療の説明の中で「下顎のオートローテーション」という言葉を耳にしたことはありませんか?
普段の生活ではあまり使われない専門用語ですが、実は噛み合わせや顔貌(かおの見た目)に大きな影響を与える重要な現象です
本記事では、下顎のオートローテーションとは何か、どのようなメカニズムで起こるのか、そして矯正治療や歯科治療の場面でどのような意味を持つのかを分かりやすく解説していきます
下顎のオートローテーションとは?

オートローテーション(Auto Rotation)とは、直訳すると「自動的な回転」という意味です
歯科領域で用いられる「下顎のオートローテーション」とは、歯や顎の位置関係が変化したときに、それに合わせて下顎が自然に回転して位置を調整する現象を指します
特に「下顎頭(顎関節部分)」を支点として、下顎全体が前方または後方に回転することで、噛み合わせの位置や顔のバランスが変わるのが特徴です
下顎がオートローテーションを起こすきっかけ
下顎のオートローテーションは、以下のような状況で起こります
歯の挺出・圧下
歯を上に伸ばしたり(挺出)、下に沈めたり(圧下)すると、その変化に合わせて下顎が自然に動きます
抜歯や補綴治療
奥歯を失ったり、かみ合わせの高さが変化すると、下顎の位置が補正的に変わります
矯正治療
出っ歯や受け口の治療で噛み合わせの高さや位置を調整する際、下顎はオートローテーションを伴いながら正しい位置に誘導されます
顎の成長や加齢変化
子どもの成長過程や、加齢による歯の摩耗・歯槽骨の吸収により、自然に下顎の位置が変化することがあります
オートローテーションの種類

下顎のオートローテーションには大きく分けて 前方回転(時計回りの変化) と 後方回転(反時計回りの変化) があります
前方回転(Counterclockwise Rotation)
噛み合わせの高さが低くなると、下顎は前方かつ上方へ移動します
これにより、下顔面の高さが短くなり、フェイスラインがシャープに見えることもあります
後方回転(Clockwise Rotation)
噛み合わせの高さが高くなると、下顎は後方かつ下方に動きます
結果として下顔面が長く見えたり、口元の突出感が増す場合があります
矯正治療におけるオートローテーションの重要性

矯正歯科治療では、単に歯を並べるだけでなく、下顎のオートローテーションをどのようにコントロールするか が治療の結果を大きく左右します
出っ歯のケースでは、奥歯を圧下して噛み合わせを低くすることで、下顎が前方回転し、横顔が改善することがあります
受け口の症例では、逆に噛み合わせを調整して下顎が後方回転するよう誘導することもあります
骨格性の不正咬合(骨格的な問題)に対しても、オートローテーションを利用することで、外科手術を避けられる場合もあるのです
オートローテーションと顔貌の変化

下顎のオートローテーションは、単に「噛めるようになる」だけではなく、顔の見た目 にも影響を与えます
- 下顎が前方回転 → 顎先が出やすく、シャープな印象に
- 下顎が後方回転 → 下顔面が長くなり、やや面長な印象に
矯正治療で「横顔がすっきりした」「フェイスラインがきれいになった」と感じる方が多いのは、オートローテーションの影響が大きいと考えられます
オートローテーションがうまくいかない場合
一方で、オートローテーションが理想的に働かない場合もあります
- 顎関節症がある
- 噛み合わせの高さを誤って設定した
- 成長期に不適切な力がかかった
このような場合には、かえって噛み合わせが不安定になったり、見た目が理想と異なる方向に変化する可能性もあるため、専門的な診断と治療計画が欠かせません
まとめ:下顎のオートローテーションは矯正の鍵

下顎のオートローテーションとは、噛み合わせや歯の位置が変化したときに、下顎が自然に回転して新しいバランスをとる現象です
- 矯正治療ではこの現象を利用して、より良い噛み合わせと美しい横顔を実現する
- 顔貌改善にも直結するため、審美面でも大きな意味を持つ
- 専門医による正確な診断が不可欠




