〜治療費を少しでも抑えるための賢い制度活用法〜
はじめに
歯列矯正は、見た目の美しさだけでなく、正しい噛み合わせや口腔の健康を維持するためにも重要な治療です。
しかし、矯正治療には数十万円から場合によっては100万円を超える費用がかかることも珍しくありません。
そこで活用したいのが、「医療費控除」という税制優遇制度です。
「矯正は見た目のためだから、医療費控除なんて使えないのでは?」
と誤解している方も多いですが、条件を満たせば矯正治療も控除の対象になります。
今回は、矯正治療における医療費控除の基本から申請方法、注意点までを徹底解説します。
医療費控除とは?

■ 制度の概要
医療費控除とは、1年間(1月1日~12月31日)の間に支払った医療費が一定額を超えた場合に、所得税や住民税の負担が軽減される制度です。
対象となる医療費は、自分自身だけでなく、生計を一にする家族分(配偶者・子ども・親など)の治療費も含まれます。
■ 控除の計算方法
医療費控除額の基本的な計算式は次の通りです:
(年間に支払った医療費合計 - 保険金等で補てんされた金額)- 10万円 = 控除額(上限200万円)
※ 所得が200万円未満の場合は、「10万円」の代わりに「所得の5%」が基準になります。
矯正治療は医療費控除の対象になる?

矯正治療が医療費控除の対象になるかどうかは、治療目的が「審美(美容)目的」か「治療目的」かによって判断されます。
● 医療費控除の対象になるケース
以下のような「治療を目的とした矯正治療」は控除の対象です。
- 噛み合わせの改善が必要と診断された場合
- 発音障害や咀嚼障害の改善を目的とした矯正
- 成長期の子どもの不正咬合の治療
- 顎関節症の予防や改善を目的とした矯正
特に、中高生や小児矯正で行われるケースの多くは医療費控除の対象となります。
● 控除対象とならないケース
以下の場合は、医療費控除の対象外となります。
- 歯並びを整えて見た目を良くしたいだけの矯正(審美目的)
- 医師から明確な治療の必要性が示されていない場合
- ファッションや美容の一環としての矯正
「見た目の改善のみを目的とする場合は、原則として医療費控除の対象外」
であることを覚えておきましょう。
医療費控除の申請に必要な書類

矯正治療で医療費控除を受けるためには、以下のような書類が必要になります。
① 領収書
矯正歯科医院から発行される治療費の領収書(原本)は必ず保管しましょう。
「矯正治療」と明記されているものが望ましいです。
② 医師の診断書(必要な場合)
治療目的の正当性を証明するため、矯正治療の必要性を記した医師の診断書や意見書を求められることがあります。
特に見た目の改善と区別がつきにくい場合は、診断書があると安心です。
③ 医療費控除の明細書
2020年分以降の確定申告では、医療費の領収書の提出は不要ですが、代わりに「医療費控除の明細書」の提出が必要となっています。
国税庁のホームページから様式をダウンロードできます。
④ 確定申告書(所得税の申告)
会社員でも医療費控除を受けるには確定申告が必須です。
e-Taxを利用すれば、スマートフォンやPCからでも簡単に申請できます。
控除額の目安:実際にどれくらい戻ってくる?

医療費控除によって戻ってくる金額(還付金)は、収入や控除対象額に応じて異なりますが、概算で以下のようになります。
| 医療費合計(矯正費用) | 年収(目安) | 戻ってくる金額(目安) |
|---|---|---|
| 50万円 | 400万円 | 約6万~8万円程度 |
| 80万円 | 600万円 | 約10万円前後 |
| 100万円 | 800万円 | 約12万円以上 |
※ あくまでも目安です。
実際には他の控除の有無や扶養状況により変動します。
医療費控除を最大限に活用するポイント

● 支払った年に申告すること
矯正治療の費用は、支払いを行った年で申告します。
たとえば、分割払いやローンの場合でも、その年に支払った金額だけが控除対象になるため、注意が必要です。
● 家族の医療費と合算可能
同居する家族の医療費を合算すれば、控除のハードル(10万円)を超えやすくなります。
たとえば、お子さまの矯正治療に加えて、家族の歯科治療や通院費を合算することで控除額が増える可能性があります。
● 通院交通費も対象に
矯正治療のための通院にかかった交通費(電車・バスなど)も医療費控除の対象です。
車での移動やタクシーは基本的に対象外ですが、公共交通機関が利用できない事情がある場合などは例外もあります。
まとめ:矯正治療と医療費控除を賢く組み合わせよう

矯正治療は、金額的な負担が大きく感じられるかもしれませんが、医療費控除という制度を正しく活用することで、実質的な負担を軽減することが可能です。
特に、子どもの不正咬合治療や咬み合わせの改善が目的の矯正治療は、控除対象になりやすいため、早い段階で歯科医院に「診断書がもらえるか」確認しておくことをおすすめします。
控除を受けるためには、確定申告の準備が必要ですが、e-Taxの活用や税務署での相談も可能です。
医療費控除は自己申告制の制度なので、申請しなければ受けられません。
しっかりと情報を整理し、賢く制度を活用して、理想の歯並びと経済的メリットの両立を目指しましょう。




