矯正治療を検討している方の中には、「治療費が高額になるため、医療費控除の対象になるのか?」と疑問に思う方も多いでしょう。
医療費控除とは、一定の条件を満たした医療費を支払った場合に、所得税の負担を軽減できる制度です。
今回は、矯正治療が医療費控除の対象となるかどうか、その条件や申請方法について詳しく解説します。
医療費控除とは?

医療費控除とは、1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合に、所得税の軽減を受けられる制度です。
具体的には、以下の計算式で求められた金額が課税所得から控除されます。
医療費控除額の計算式
- (年間に支払った医療費の総額 - 保険金などで補填された額) - 10万円(または総所得金額等の5%のいずれか少ない方)
控除額の上限は200万円です。
1-1. 控除対象となる医療費の条件
医療費控除の対象となるのは、以下の条件を満たす場合です。
- 自己または生計を共にする家族のために支払った医療費
- 医療行為として認められる治療のための費用
- 美容や娯楽目的でないこと
このため、矯正治療が医療費控除の対象となるかどうかは、「医療行為」として認められるかがポイントになります。
矯正治療は医療費控除の対象になるのか?

矯正治療が医療費控除の対象になるかどうかは、その治療の目的によって異なります。
2-1. 医療費控除の対象となる矯正治療
矯正治療が医療費控除の対象となるのは、以下のような場合です。
(1) 発育上の問題を改善するための治療
子どもの矯正治療は、歯並びや噛み合わせが成長に影響を与える場合があり、機能的な改善を目的とした治療であれば、医療費控除の対象となります。
(2) 噛み合わせの改善を目的とした治療
成人の場合でも、噛み合わせの異常により食事や発音に支障をきたす場合には、医療費控除の対象となることがあります。
(3) 医師の診断に基づいた治療
矯正治療が医療的に必要であると診断された場合、その治療費は控除の対象になります。
例えば、顎変形症や重度の不正咬合で手術を伴う治療などが該当します。
2-2. 医療費控除の対象外となる矯正治療
一方、以下のような場合には、医療費控除の対象外となります。
(1) 審美目的の矯正治療
見た目を良くするためだけの矯正治療は、医療行為ではなく美容目的と見なされるため、控除の対象外です。
例えば、「歯並びを美しくしたい」「笑顔を魅力的にしたい」といった理由での矯正治療は該当しません。
(2) 医療的な必要性が認められない場合
歯科医師の診断による治療ではなく、自己判断で行う矯正治療は、医療費控除の対象外となる可能性が高いです。
医療費控除を受けるための手続き

矯正治療が医療費控除の対象となる場合、適切な手続きを行うことで税金の負担を軽減できます。
3-1. 必要な書類
医療費控除を申請する際には、以下の書類を準備する必要があります。
確定申告書
税務署や国税庁のホームページからダウンロード可能です。
医療費控除の明細書
2017年分以降は、領収書の提出に代わり、医療費控除の明細書を提出する必要があります。
矯正治療の領収書
治療を受けた歯科医院で発行された領収書は必ず保管しておきましょう。
診断書(必要に応じて)
矯正治療が医療的に必要であることを証明するために、診断書を求められる場合があります。
特に成人の矯正治療では、医療目的であることを明確にするために診断書の提出が望ましいです。
3-2. 申告の流れ
確定申告書を作成する
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用すると簡単に作成できます。
必要書類を添付する
確定申告書と医療費控除の明細書を準備します。
必要に応じて診断書を添付します。
税務署へ提出する
電子申告(e-Tax)または税務署への持参・郵送で申告を行います。
還付金を受け取る
還付金は申告後、通常1~2ヶ月程度で指定の口座に振り込まれます。
医療費控除の注意点

矯正治療の医療費控除を申請する際には、以下の点に注意しましょう。
4-1. 保険適用外の治療費でも控除可能
矯正治療は基本的に保険適用外ですが、医療費控除の対象になるかどうかは別の判断基準となります。
保険適用外であっても、医療的に必要と認められれば控除対象となります。
4-2. デンタルローンを利用した場合
デンタルローンを利用して分割払いをした場合でも、支払った年の分は医療費控除の対象となります。
ただし、金利や手数料は控除対象外です。
4-3. 家族の医療費と合算できる
自分だけでなく、生計を共にする家族の医療費と合算して申請することが可能です。
例えば、子どもの矯正治療費と親の治療費を合わせて控除を受けることができます。
まとめ

矯正治療が医療費控除の対象になるかどうかは、治療の目的によって異なります。
機能的な問題を改善するための治療であれば控除の対象になりますが、審美目的の場合は対象外です。
申請の際には、領収書や診断書を適切に準備し、確定申告の手続きを正しく行いましょう。
高額になりやすい矯正治療ですが、医療費控除を活用することで負担を軽減することが可能です。




