2025.03.23マルチループワイヤー矯正の概要
マルチループワイヤー矯正（Multiloop Edgewise Archwire, MEAW）は、特殊な形状のワイヤーを用いた矯正治療法の一つです。
一般的なワイヤー矯正とは異なり、ワイヤーに複数のループ（折り曲げ部分）を作ることで、より細かい歯の動きをコントロールできます。
この方法は、特に噛み合わせの改善や、抜歯をせずにスペースを確保する必要があるケースに適用されることが多いです。
顎のズレや骨格の不調和にも対応できるため、骨格的な問題を伴う不正咬合の治療にも効果を発揮します。
マルチループワイヤー矯正の特徴
（1）ループの働き
通常のワイヤー矯正では、ワイヤーをストレートに通し、歯をゆっくりと移動させます。
一方、マルチループ矯正では、ワイヤーに複数のループを設けることで、
- 歯の傾きを細かく調整できる
- 上下の歯の位置関係を改善できる
- 咬合のバランスを整える
といった効果が期待できます。
（2）適応症例
マルチループワイヤー矯正は、特に以下のような症例に適しています。
- 開咬（前歯が噛み合わない）
- 過蓋咬合（噛み合わせが深い）
- 下顎の前突（受け口）
- 抜歯を避けたい症例
- 顎のズレがある症例
（3）歯の移動を最適化
マルチループワイヤー矯正では、ワイヤーのループ部分がスプリングのような働きをし、歯を理想的な方向へ動かす力を生み出します。
そのため、従来のワイヤー矯正に比べて、より効率的に歯並びを整えることができます。
マルチループワイヤー矯正のメリット
（1）骨格的な問題を改善できる
通常の矯正では対応が難しい骨格的な不正咬合も、マルチループ矯正なら治療が可能なケースがあります。
特に、顎のズレがある場合や、開咬などの治療には有効です。
（2）抜歯を回避できる可能性がある
従来の矯正治療ではスペース確保のために抜歯が必要となることが多いですが、マルチループ矯正では歯の動きを調整しながらスペースを作ることができるため、非抜歯での治療が可能になることがあります。
（3）治療期間の短縮
マルチループワイヤー矯正では、通常のワイヤー矯正よりも細かく歯を動かせるため、治療期間が短縮されるケースがあります。
ただし、症例によって異なるため、歯科医と相談が必要です。
（4）仕上がりの精度が高い
ワイヤーの細かい調整が可能なため、仕上がりの精度が高くなります。
特に噛み合わせのバランスを整えるのに優れています。
マルチループワイヤー矯正のデメリット
（1）技術的に高度な治療
マルチループワイヤー矯正は、ワイヤーの調整が非常に重要な治療法であり、高度な技術を要します。
そのため、対応できる歯科医師が限られている場合があります。
（2）違和感を感じることがある
ループが多いため、通常のワイヤー矯正よりも装置の存在感が強く、最初は違和感を覚えることがあります。
（3）メンテナンスが難しい
ループが多い分、食べ物が引っかかりやすく、歯磨きがしにくいことがあります。
適切なケアを行わないと、虫歯や歯周病のリスクが高まります。
（4）適応できる症例が限られる
すべての不正咬合に適用できるわけではなく、症例によっては他の矯正方法の方が適している場合もあります。
マルチループワイヤー矯正の治療の流れ
（1）初診・カウンセリング
患者の歯並びや噛み合わせを詳しくチェックし、マルチループワイヤー矯正が適しているか診断します。
（2）治療計画の立案
レントゲンや模型を用いて、どのように歯を動かすかを計画します。
（3）矯正装置の装着
マルチループワイヤーを装着し、歯を適切な方向へ動かします。
（4）定期調整
月に1回程度、歯の動きをチェックし、ワイヤーの調整を行います。
（5）保定
歯並びが整った後、後戻りを防ぐためのリテーナーを装着します。
まとめ
マルチループワイヤー矯正は、通常のワイヤー矯正よりも細かく歯を動かすことができ、特に骨格的な問題を伴う症例や、非抜歯矯正を希望する場合に適した治療法です。
しかし、技術的に高度な治療であり、メンテナンスの手間が増えるなどのデメリットもあります。
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