「うちの子、下の歯が前に出てる気がする…」
「このまま様子を見ても大丈夫?」
お子さんの噛み合わせに違和感を覚えたとき、特に“受け口”と呼ばれる状態(反対咬合)があると、不安になる親御さんも多いはずです。
では、受け口のような噛み合わせのズレは早期に治療した方がいいのでしょうか?
それとも永久歯が生えそろうまで待っても問題ないのでしょうか?
今回は、子どもの受け口治療における「早期対応」の必要性について、専門的な視点を交えながらわかりやすく解説していきます。
受け口(反対咬合)ってどんな状態?

受け口とは、下の歯列(下顎)が上の歯列(上顎)よりも前に出ている噛み合わせのことです。
専門的には「反対咬合」や「下顎前突」とも呼ばれます。
【受け口の主な特徴】
- 見た目が“しゃくれた”ような顎になる
- 正常な発音がしにくくなる(サ行・タ行など)
- 咀嚼(そしゃく:噛むこと)がうまくできない
- 顎の骨の成長バランスに悪影響を及ぼす可能性がある
受け口の原因には、大きく分けて2つのタイプがあります:
- 骨格性:下顎が過剰に成長、もしくは上顎の成長が不足している
- 歯性:上の前歯が内側に傾いている/下の前歯が外側に傾いている
骨格性の受け口は遺伝の影響が強く、歯性のものは生活習慣や癖(舌の位置や口呼吸など)によって引き起こされることもあります。
子供のうちに治療したほうがいい理由

結論から言うと、子供の受け口は早期治療が推奨されるケースが多いです。
特に成長期の初期段階(3歳~小学校低学年)での対応がカギとなります。
【理由1:顎の骨の成長がコントロールしやすい】
骨格性の受け口は、下顎の骨が過度に成長している、もしくは上顎の成長が追いついていない場合が多く見られます。
成長期の骨は柔軟性があるため、装置を使って正常な方向へと誘導しやすいのです。
逆に成長が止まってからでは、骨格自体を変えるには外科手術が必要になることもあります。
【理由2:悪化するリスクを減らせる】
受け口を放置していると、噛み合わせの異常が原因でさらに下顎が前に突出するように成長してしまうことがあります。
自然に治るケースは非常に限られており、放置はむしろ悪化を招くことも。
【理由3:発音や食事への影響を抑えられる】
発音や咀嚼に影響が出ることで、日常生活に小さなストレスが蓄積されます。
特に発音の問題は、就学前の早い段階で改善を図ることが望ましいとされています。
治療法はどんなものがあるの?

受け口の治療は、年齢や原因によって内容が異なります。
以下に代表的な方法を紹介します。
ムーシールド(反対咬合用マウスピース)
3?6歳くらいの乳歯列期に使用されることが多い装置で、舌の位置や口腔周囲の筋肉バランスを整えて、受け口の改善を図るシンプルなマウスピース型治療器具です。
- 夜間のみ装着
- 痛みが少なく、取り外しが簡単
- 習慣性が重要なので親の協力がカギ
上顎の成長促進装置(拡大床など)
上顎の成長が不足している場合は、上顎の骨の幅を広げる装置を使用します。
早期であれば、成長を促すことによってバランスの取れた顔貌を形成できます。
本格的な矯正治療(Ⅱ期治療)
永久歯がすべて生えそろってからは、ワイヤー矯正やマウスピース矯正などで歯列全体を整える治療に移行します。
Ⅰ期治療で骨格の土台を整えておくと、Ⅱ期治療がスムーズかつ短期間で済むことも。
早期治療のデメリットは?

一方で、早期治療には慎重に見極めるべきポイントもあります。
個人差が大きい:自然に改善する例もまれにあり、すべての受け口が早期治療の対象とは限りません。
治療が長期化する場合がある:Ⅰ期治療からⅡ期治療まで通院が続くことがあり、費用や手間が増える可能性も。
本人の協力度が必要:装置の装着や習慣づけは、本人と保護者の協力が欠かせません。
したがって、一度専門医の診断を受け、必要性をきちんと判断してもらうことが最も重要です。
よくある疑問Q&A
Q. 永久歯に生え替わるまで様子見でもいい?
→ 乳歯列期の受け口は自然に治るケースもありますが、放置すると骨格に悪影響を及ぼすことも。
小児矯正の専門医による診断を早めに受けましょう。
Q. 治療は痛い?
→ 装置によって多少の違和感はありますが、強い痛みを伴うケースは少なく、特にムーシールドは子どもにもやさしい方法です。
Q. 保険は効く?
→ 基本的に矯正治療は自費診療ですが、顎変形症など外科手術が必要と診断された場合は保険適用の可能性あり。
医院にて事前確認をおすすめします。
まとめ:早期の一歩が、将来の大きな差に

子どもの受け口は、「様子を見よう」と放置してしまいがちですが、成長期だからこそできる治療があります。
骨の成長を味方にできるのは、子どもの特権です。
もちろん、すべてのケースで即治療が必要なわけではありません。
だからこそ、「今、どうすべきか?」を正しく判断するためにも、まずは一度、当院に相談にお越し下さい。




