成功のカギは“患者様の協力”にあり

歯列矯正は、歯並びや噛み合わせを改善し、見た目だけでなく健康面にも良い影響を与える医療行為です。

なかでも近年人気を集めているマウスピース矯正（インビザラインなど）は、透明で目立たず取り外し可能な点が多くの患者様に支持されています。

しかし、マウスピース矯正は装置をただ装着するだけで歯が自然と動くわけではありません。

特に「アップダウンエラスティック（顎間ゴム）」を併用する症例では、患者様の協力が治療の成否を大きく左右すると言われています。

本記事では、マウスピース矯正におけるアップダウンエラスティックの役割や、なぜ患者様の協力が不可欠なのかを詳しく解説します。

アップダウンエラスティックとは？

アップダウンエラスティックとは、上顎と下顎に装着したマウスピースにゴム（エラスティック）を引っかけることで、上下の歯の噛み合わせを調整する補助装置です。

ワイヤー矯正でも同様のエラスティックが使用されますが、マウスピース矯正では患者自身が毎日自分で取り付け・取り外しを行う必要があります。

これが大きな違いであり、治療の成否に直結するポイントです。

主な目的

  • 噛み合わせの誘導（上顎前突・下顎前突の調整）
  • 顎の成長方向のコントロール（特に成長期の患者）
  • 歯列全体の垂直的バランスの補正

なぜ患者様の協力が必要なのか？

ゴムの装着時間が結果を左右する

アップダウンエラスティックは、1日におよそ20～22時間の装着が必要です。

これを怠ると、歯が理想の位置に動かず、計画通りに治療が進みません。

歯列の動きは継続的な力の積み重ねによって実現するため、装着の「習慣化」と「継続性」が非常に重要です。

自己管理ができないと治療期間が延びる

エラスティックを装着し忘れたり、装着時間が短かったりすると、治療の進行が大きく遅れるだけでなく、マウスピースの再設計や再作成が必要になるケースもあります。

結果的に、追加費用が発生したり、治療期間が当初の予定より大幅に長引いたりすることも。

痛みや違和感への理解が必要

初めてアップダウンエラスティックを装着すると、痛みや違和感を感じる方も少なくありません。

ただし、これは歯が正しい方向へ動いている証拠でもあります。

重要なのは、一時的な不快感を我慢して装着を継続すること。

痛みのピークは通常、数日から1週間程度でおさまります。

協力的な患者様が治療を成功に導く理由

マウスピース矯正の治療計画は、3Dシミュレーションをもとに立てられていますが、それを現実に近づけるためには、患者様の主体的な取り組みが欠かせません。

特にアップダウンエラスティックの使用が必要な症例は、ただ歯を並べるだけでなく、顎の位置や噛み合わせの細かな調整が必要なため、より高度な治療が求められます。

成功例に共通するポイント

  • 毎日決まった時間に装着している
  • ゴムが切れた時や装着忘れにすぐ気づき対処している
  • 痛みや違和感に対して前向きな姿勢を持っている
  • 歯科医師とのコミュニケーションを積極的に行っている

歯科医師からのアドバイス：協力を続けるための工夫

ゴムの装着を習慣化する方法

  • 歯磨き後に自動的にゴムを付けるルーチンをつくる
  • アラーム機能を活用して装着の時間を忘れない
  • ゴムを持ち歩き、外出先でも装着できるように準備する

不安や疑問はすぐに相談を

「装着中に違和感がある」「ゴムがうまく引っかけられない」など、気になることはすぐに担当の矯正医に相談しましょう。

放置してしまうと誤った装着が続いてしまい、逆に歯列に悪影響を及ぼす可能性もあります。

まとめ｜マウスピース矯正は“チーム治療”

マウスピース矯正は、歯科医師と患者様が二人三脚で進める“チーム医療”です。

特にアップダウンエラスティックの使用が求められる症例では、患者様の協力が治療結果を左右する最も大きな要素となります。

「理想の歯並び」を手に入れるためには、日々の小さな積み重ねが不可欠です。

しっかりと指示を守り、わからないことがあれば早めに相談することで、最短かつ最良の結果へとつながるでしょう。