~マウスピース矯正の適応と注意点を歯科医が解説~
「うけ口(反対咬合)や出っ歯(上顎前突)、顎偏位などで外科的な手術を受けた後、マウスピース矯正(インビザライン)で歯並びの仕上げをしたい」
と考える方が増えています。
特に、手術後の細やかな調整や仕上げを希望する方にとって、目立たないインビザラインは魅力的な選択肢です。
では実際に、外科手術後でもマウスピース矯正は可能なのでしょうか?
今回は、顎変形症に対する外科矯正とその後のマウスピース矯正の適応や注意点について、専門的な視点からわかりやすく解説します。
外科矯正とは?なぜ手術が必要なのか?

うけ口や出っ歯、顎偏位(顎が左右にズレている状態)は、歯だけでなく骨格レベルの不調和が原因となっているケースが多くあります。
このような場合、歯列矯正のみでは限界があるため、顎の骨を外科的に動かす「外科矯正(顎変形症の手術)」が必要になります。
一般的に外科矯正は次のような流れで進みます:
- 術前矯正(ワイヤー矯正など)
手術に向けて歯列を整える - 外科手術(顎の骨切り術)
下顎または上顎、あるいは両顎を骨ごと移動 - 術後矯正(微調整や仕上げ)
術後の噛み合わせや見た目を整える段階
この中の術後矯正で、マウスピース矯正(インビザライン)が選択肢となることがあります。
外科矯正後にインビザラインは可能なのか?

結論から言えば、外科矯正後でもインビザラインによる矯正治療は可能です。
ただし、すべての症例で適応されるわけではなく、いくつかの条件と判断基準があります。
- インビザラインが可能な条件とは?
- 術後の歯並びが比較的整っている場合(大きな歯の移動が必要ないケース)
- 顎間ゴムの使用が不要もしくは限定的で済む場合
- 術後の骨の安定が確認できている場合
- 医師が歯の移動予測をしっかり立てられる症例
これらの条件がそろっていれば、術後の仕上げや咬合微調整においてインビザラインは審美的かつ快適な選択肢となります。
インビザラインのメリットとデメリット(外科手術後の場合)

◎ メリット
- 目立たない:透明なマウスピースなので審美的にも優れる
- 取り外し可能:食事や歯磨きがしやすく衛生的
- 痛みが少ない:ワイヤーよりも圧力が緩やかで違和感が少ない
- 通院頻度が少なめ:通院間隔を広げられることも
△ デメリット・注意点
- 自己管理が必要:1日20時間以上の装着が必要
- 適応範囲に限りがある:複雑な歯の動きには不向きなことも
- 術後の安定を見極めたうえで開始する必要がある
- 顎間ゴムの使用が難しいこともある
術後にインビザラインを選択する場合には、術前・術後を通して矯正に精通した歯科医師の診断が欠かせません。
インビザラインを希望するなら「術後の経過観察」がカギ!

外科手術後のマウスピース矯正を成功させるためには、「術後の経過」が非常に重要です。
具体的には、次のような点に注目します:
- 顎の骨の安定性の確認(CTやX線で)
- 咬合状態(上下の噛み合わせ)が安定しているか
- 顎関節に痛みや違和感がないか
これらの項目がクリアになったうえで、術後数か月から1年以内にマウスピース矯正に移行することが多いです。
インビザラインは術前矯正でも使える?
近年では、症例によっては外科手術前の術前矯正にインビザラインを活用するケースも見られます。
特に海外ではデジタルシュミレーションの精度が高まり、術前からマウスピースで理想的な歯並びに近づける流れも出てきました。
ただし、術前矯正ではワイヤー矯正の方がコントロールしやすいため、日本ではまだワイヤーが主流です。
まとめ|インビザラインは外科矯正後の「仕上げ」に最適な選択肢になることも!

うけ口や出っ歯、顎偏位など骨格的な不正咬合に対する外科手術の後でも、インビザラインによる矯正治療は適応可能なケースが増えています。
特に術後の細かい噛み合わせの調整や、目立たない矯正を希望される方にとっては、術後のQOL向上に貢献できる矯正法といえるでしょう。




