多くの人は、幼少期から小学校高学年までの間に乳歯がすべて抜け、永久歯へと生え変わります。
しかし、中学生や高校生になっても乳歯が抜けずに残っているケースは珍しくありません。
今回は、思春期を迎えても乳歯が残る原因と、その際に取るべき適切な対処法について詳しく解説します。
そもそも「乳歯晩期残存」とは?
「乳歯晩期残存(にゅうしばんきざんぞん)」とは、本来なら永久歯へと生え変わるはずの乳歯が、中学生や高校生になっても口腔内に残っている状態を指します。
通常、乳歯は6歳頃から順番に抜け始め、12~13歳頃までにはすべて永久歯に置き換わります。
しかし、様々な理由により、この自然な生え変わりが起こらないことがあります。
中学・高校生でも乳歯が残る主な原因

先天性欠如(せんてんせいけつじょ)
もっともよくある原因は、「永久歯の芽」がそもそも存在しない場合です。
医学的には「先天性欠如」と呼ばれ、生まれつき特定の永久歯のもととなる歯胚(しはい)が形成されない状態です。
日本人ではおよそ10人に1人程度の割合で見られるとされ、特に下顎の第二小臼歯(奥歯の手前)や側切歯(前歯のすぐ隣)で多く確認されます。
萌出遅延(ほうしゅつちえん)
永久歯が存在していても、生えてくるタイミングが大幅に遅れている場合もあります。
歯の萌出(ほうしゅつ:歯が歯茎を突き破って出てくること)は個人差が大きいため、多少の遅れは問題になりません。
しかし、大幅な遅延があると乳歯が抜けずに長期間残り続けることがあります。
萌出異常(ほうしゅついじょう)
永久歯が正しい方向に生えてこない「異所萌出(いしょほうしゅつ)」も原因の一つです。
例えば、永久歯が歯茎の深い位置や斜めの方向で成長してしまい、乳歯の根を溶かす力が弱まることで、乳歯が抜けずに残ることがあります。
過剰歯・癒合歯などの歯列異常
口腔内に余分な歯(過剰歯)が存在したり、歯と歯が結合してしまう「癒合歯(ゆごうし)」があると、正常な生え変わりが妨げられます。
これらはレントゲン検査で確認することができます。
放置するとどんな問題が起こる?

噛み合わせの悪化
乳歯は本来の寿命を超えると根が弱くなり、噛む力に耐えられなくなります。
放置すれば噛み合わせのバランスが崩れ、顎関節症や歯列不正の原因にもなりえます。
虫歯・歯周病のリスク増大
乳歯は永久歯に比べてエナメル質(歯の表面)が薄く、虫歯や歯周病になりやすい傾向があります。
思春期の食生活の変化や口腔ケア不足が加わると、問題が悪化しやすくなります。
見た目や発音への影響
特に前歯部で乳歯が残ると、歯並びや審美性が損なわれたり、発音への影響も懸念されます。
中高生という多感な時期には心理的負担も大きくなりかねません。
中高生で乳歯が残っていたらどうする?

歯科医院でのレントゲン検査を受ける
まず最初にすべきことは、歯科医院でパノラマレントゲンを撮影し、「永久歯が存在するかどうか」を確認することです。
永久歯の有無や位置、萌出状態を確認することで、適切な治療方針が立てられます。
永久歯が存在する場合の対処
永久歯が確認できれば、以下のような処置が検討されます。
乳歯の抜歯
永久歯の萌出を促すため、乳歯を抜歯することがあります。
矯正治療
萌出方向や歯並びに問題がある場合は、矯正装置で永久歯の誘導や歯列の改善を行います。
経過観察
永久歯が確実に生えてくる見込みがある場合は、一定期間様子を見ることもあります。
永久歯が欠如している場合の対処

永久歯が存在しないと診断された場合は、乳歯を「できる限り長持ちさせる」ことが基本方針になります。
乳歯の保存
しっかりとクリーニングし、虫歯や歯周病を防ぎながら乳歯を使い続けます。
補綴治療(ほてつちりょう)
乳歯が抜けたり寿命を迎えた場合は、ブリッジ、インプラント、部分入れ歯などで歯の欠損を補う治療を行います。
矯正による隙間閉鎖
場合によっては、矯正治療で欠損部の隙間を閉じる方法も選択肢になります。
まとめ:まずは早めの相談を

中学生・高校生になっても乳歯が残っている場合、それ自体は必ずしも深刻な病気ではありません。
しかし、そのまま放置すると歯列や噛み合わせ、さらには口腔内全体に悪影響を及ぼすリスクがあります。
大切なのは「現状を正しく把握し、適切な対応を取ること」です。
思春期という成長の節目に、自分の歯の状態を知ることは、将来の口腔健康にもつながります。
もしご自身やお子さんに「乳歯がまだ残っているかも?」という不安があれば、早めに歯科医院で相談してみてください。




