開咬(オープンバイト)とは、上下の歯を噛み合わせた際に前歯や奥歯の一部が接触せず、隙間ができる噛み合わせの異常を指します。
特に前歯に隙間が生じる「前歯部開咬」は、見た目だけでなく、発音や食事にも影響を及ぼすことがあります。
一方、奥歯が噛み合わずに隙間ができる「臼歯部開咬」もあり、咀嚼機能の低下を招きます。
開咬の原因

開咬の原因は、大きく分けて「遺伝的要因」と「環境的要因(後天的要因)」の二つに分類されます。
遺伝的要因
骨格の問題
顎の発育は遺伝の影響を受けやすく、上下の顎の成長バランスが崩れると開咬になりやすくなります。
特に、上顎が過度に成長する場合や下顎が後退する場合に開咬が起こりやすくなります。
歯の大きさや形
歯のサイズや配置の遺伝的な要素も、開咬の一因となります。
例えば、歯の生える位置がずれていると、適切な噛み合わせが形成されにくくなります。
環境的要因(後天的要因)

後天的な習慣や生活環境が開咬を引き起こすこともあります。
指しゃぶりや舌突出癖(ぜつとっしゅつへき)
幼少期の指しゃぶりや舌を前に突き出す癖が長期間続くと、前歯に持続的な圧力がかかり、開咬が形成されることがあります。
特に、3歳以降も指しゃぶりを続けると歯列に影響を与える可能性が高まります。
口呼吸
鼻ではなく口で呼吸する習慣があると、舌の位置が低くなり、正しい歯列の成長を妨げることがあります。
これにより、上下の前歯が噛み合わない状態(開咬)になりやすくなります。
姿勢の悪さ
猫背などの姿勢の悪さは、顎の発達に影響を与えることがあります。
特に、長時間のうつ伏せ寝や頬杖の習慣は、顎の歪みを引き起こし、開咬の要因となることがあります。
不適切な食生活
柔らかいものばかり食べると、顎の発達が十分に進まず、噛み合わせの異常が生じやすくなります。
逆に、硬いものを適度に食べることは、正しい噛み合わせの形成に役立ちます。
歯ぎしりや食いしばり
無意識のうちに歯ぎしりや食いしばりをすることで、歯並びに影響が出ることがあります。
特に、奥歯への過度な負担がかかることで、前歯が噛み合わなくなるケースもあります。
開咬の影響

開咬は単なる見た目の問題ではなく、以下のような影響を及ぼします。
発音への影響
前歯が噛み合わないことで、特に「サ行」や「タ行」の発音が不明瞭になりやすいです。
舌の位置が不安定になるため、空気が抜けるような発音になることもあります。
咀嚼(そしゃく)機能の低下
開咬の人は、食べ物をうまく噛み切れないことが多く、消化不良を起こしやすくなります。
特に、前歯で噛み切る動作が困難になるため、食事の際にストレスを感じることがあります。
顎関節症のリスク
正しい噛み合わせができないと、顎の関節に負担がかかり、顎関節症を引き起こす可能性があります。
口を開閉する際に痛みを感じたり、顎のカクカクした音が鳴る場合は、早めの対処が必要です。
歯や歯茎への負担
一部の歯に過剰な力がかかることで、歯のすり減りや歯周病のリスクが高まります。
また、歯の根元にストレスがかかりやすく、歯がグラつく原因になることもあります。
開咬の矯正方法

開咬の治療には、軽度から重度までさまざまな方法が存在します。
マウスピース矯正(インビザラインなど)
透明なマウスピースを装着して歯を少しずつ動かす方法です。
メリット: 目立ちにくく、取り外しが可能。
デメリット: 重度の開咬には適さない場合がある。
ワイヤー矯正(ブラケット矯正)
金属やセラミックのブラケットを歯に装着し、ワイヤーで歯を動かす方法です。
メリット: ほとんどの開咬に対応可能。
デメリット: 見た目が目立ちやすく、口内炎になりやすい。
MFT(筋機能療法)
舌の位置や口の周りの筋肉を鍛えるトレーニングを行い、自然に正しい噛み合わせに導く方法です。
メリット: 習慣の改善ができる。
デメリット: 効果が出るまで時間がかかる。
外科矯正(手術)
顎の骨の形自体に問題がある場合、外科手術によって顎の位置を調整します。
メリット: 重度の開咬にも対応可能。
デメリット: 術後のダウンタイムが必要で、費用が高い。
まとめ

開咬は、遺伝的な要因だけでなく、指しゃぶりや舌の癖、口呼吸などの生活習慣も大きく関係しています。
放置すると、発音の問題や咀嚼機能の低下、顎関節症のリスクが高まるため、早期の治療が重要です。
矯正方法にはマウスピース矯正やワイヤー矯正、筋機能療法、外科手術などがあり、開咬の程度に応じた治療を選択することが大切です。




